不動産コラム

不動産コラム

私の住まい 今いくら?無料査定依頼・売却相談

不動産所得のメリット・デメリットとその注意点

最近、投資目的で賃貸不動産を購入したという話を聞く機会が増えました。賃貸不動産の投資は投資信託などとは違って、購入したらあとは何もしなくていいというものではありません。物件を貸すときには賃借人と賃貸借契約を結ぶ必要があり、1年間の不動産収入や経費をまとめて確定申告をする必要もあります。 順調に賃借人が見つかり修繕工事も計画通りに進めば、想定した通りの収益を得ることができます。ただ、実際には思うように収益を得ることができなかったり、契約や管理、確定申告の経理が負担になったりしたために、売却してしまうケースもあります。今回は主に個人の所得税の面から、賃貸不動産を取得したときのメリットとデメリットについて説明します。 賃貸不動産のメリットとデメリット   賃貸不動産は、賃借人との賃貸借契約が終わると通常は毎月家賃収入を受け取ることができます。特殊な契約や解約、遅延がない限りは、毎月一定の収入を得られるため、比較的安心な投資です。そのため、定年後の生活費を不動産所得から得ている人は多くいます。この安定収入は不動産投資の大きなメリットです。 ただし、少しでも不動産所得を多く得るためには、できる限り支出を少なくすることが必要で、税金もなるべく少なくしなければなりません。ところが、所得税は累進課税といって、所得が多くなっていくと税率が上がり、税額も所得の上昇割合以上に上がっていく仕組みになっています。 例えば、不動産購入によって前年は給与所得のみだった状態から給与所得と不動産所得の2つの所得になったとします。給与所得だけだった年は税率が20%で、不動産所得が加わったことで税率が30%になってしまった場合には、年末調整で確定していた給与所得の徴収税額だけでは給与所得に対する税額も足らなくなり、追加で納税が必要になります。 給与所得控除後の所得300万円 不動産所得400万円の場合は、以下の計算になります。   賃貸不動産のメリットとデメリット   以上のように、不動産所得が400万円上乗せになったことで、確定申告の際に737,200円を追加で納税することになります。確定申告によって不動産所得と給与所得を合算することでこれだけ税率が変わってしまうのが累進課税の仕組みです。 累進課税を考慮した場合、賃貸不動産を購入する際には以下の計算が成り立つことが必要です。これが成り立たないと、賃貸不動産購入によって支出だけ増えてしまうことになります。  
確定申告での納税額-年末調整後の給与所得税額<その年の不動産の収入から支出を引いた残額
  ただし、これが成り立たないケースは、ローンの返済期間が短いために毎月の返済額が多いなどの極端な場合以外はないとは思います。しかし、万が一これがぎりぎり成り立っている場合は、急な修理だけで成り立たなくなる可能性があり、賃貸不動産の購入は大きなデメリットになってしまいます。 そのため、納税額をできる限り少なくすることがとても重要です。そのためには、賃貸不動産の収入と経費を正確に把握して経費にできる支出を落とさないことが必須です。 不動産所得の収入   賃貸不動産の入金の中で「家賃」「共益費」「礼金」「更新料」などは、所得税の課税になります。一方で契約時に受け取る敷金や保証金などの預り金は解約時に返還が前提になるため、所得税の課税対象にはなりません。ただし、オフィスなどの契約では解約時や更新時に保証金償却を行った場合、償却額相当額は返還する必要がなくなります。またこの場合の保証金の償却額は、償却があった年の所得として所得税の課税対象になります。 不動産所得の経費   不動産収入を得るためには経費がかかります。賃貸借契約時の経費には仲介手数料や収入印紙代などがあり、毎月の経費には不動産会社へ管理を委託した時の管理費や水道光熱費などがあります。固定資産税や所得税や住民税、所得が多い場合には事業税、居住用以外の賃貸がある場合には消費税の納税が必要な場合もあります。 賃貸不動産の支出の中でも、不動産所得を計算する上で経費として控除できるものとできないものがあります。 注意が必要な経費  

損害保険料

賃貸不動産の火災保険料です。ただし、1年を超える長期の保険契約を一括で支払った場合には、支払った全額をその年の経費にすることはできません。支払総額を契約月数で割って、その年に対応する月数の保険料を経費に計上します。

支払手数料

不動産会社へ支払う仲介手数料や管理費等です。一括管理を依頼している場合には、物件に関する入金と出金を一覧表でもらうケースがあります。入出金の内訳を確認して、出金には敷金返金や修繕費などそのまま経費にできないものが含まれていることがあり、項目ごとに経費にできるかどうかの検討が必要です。

水道光熱費

物件の共用部分の電気代や水道代、一時的に空いた物件の電気代や水道代などです。賃貸契約の解約があったあとの賃貸予定がない物件の水道光熱費は経費にすることはできません。

租税公課

賃貸不動産にかかわる税金で、固定資産税、収入印紙代、事業税、消費税などです。経費にできる税金は決められていて、所得税と住民税は経費にすることができません。 事業税は、賃貸不動産が一定規模以上で事業に認定されるときに課税される税金です。確定申告書を提出している場合、事業税の申告書を提出する必要はなく、その申告内容から判断して事業税の課税対象となれば課税都道府県から納付書が郵送されてきます。支払った金額はその年の経費にすることができます。 消費税は、課税売上が1,000万円を超えた年の翌々年から申告と納税が必要になります。居住用の家賃収入に対する消費税は非課税で、年合計が1,000万円を超えても消費税の課税事業者にはなりません。ただ、ウィークリーマンションは課税売上になることがあるため消費税の課税売上かどうかの判断はとても難しく、不動産収入の内容によって検討が必要です。 消費税の課税事業者になったら家賃とは別に消費税の請求を忘れないようにしましょう。不動産所得を計算する際に消費税込みで経理処理をしている場合、消費税の納税は経費にすることができます。

減価償却費

建物の購入時は購入金額(10万円以上の場合)の全額を一括で経費にすることはできません。その取得価格を法律で決められた耐用年数で割って、その金額を減価償却費として毎年経費計上します。減価償却費の計算は、最初に計算設定を間違えてしまうとずっと間違えたままになってしまうため、購入時の経理処理は大切です。資産の種類やその構造によって耐用年数が違い、償却費を計算する方法も異なります。所得税の減価償却費の計算方法は、原則として毎年一定の減価償却費になる定額法で計算します。

支払利息

賃貸不動産をローンで購入した場合に支払った利息です。利息は経費にすることができますが、返済の元本は経費にはなりません。また、土地と建物を一緒にローンで購入し不動産所得が損失になる場合には、土地に対応する利息は損失として他の所得と相殺(損益通算)することができません。

修繕費

賃貸不動産の修繕をした場合には修繕費としてその年の経費にすることができます。ただし、修繕費のなかでも、新しいものに交換するなどした額は資本的支出といって減価償却計算の対象になります。資本的支出は修繕費としてその年の経費にするのではなく、減価償却の計算をして耐用年数の期間で経費にしていきます。

家事関連費

所得税を計算する際に、個人的な支出と所得を得るための経費を合理的に分けることができない場合には経費として控除することができません。逆に、合理的に分けることができる場合には、経費にすることができます。 自動車を例にとると、不動産所得を得るための使用を走行距離などで個人的な使用と経費に分けることができれば、自動車に関わる支出を経費にすることができます。これにあてはまるものは、取得金額の「減価償却費」「駐車場代」「自動車保険」「車検費用」などがあります。 普段からこの点に意識していると、例えばガソリンを不動産所得にかかわる仕事の走行前に満タンにしておき、使用が終わった後に再度満タンにすれば、個人使用と分けることが可能です。後から満タンにしたガソリン代は経費にすることができます。 経費と家事関連費を合理的に分けることができれば、これまで税金を引き下げることのなかった支出を経費にすることができ、所得税等を少なくすることができます。これは、賃貸不動産購入のメリットです。 青色申告のメリット   不動産所得や事業所得などは、青色申告制度を選択し申告することができます。青色申告を選択すると、青色申告特別控除の適用、一定規模以上の場合の青色事業専従者給与の経費算入、損失の繰り越し(純損失の繰越し)や繰戻しなどの特典があり、節税効果があります。 青色申告で確定申告をするには、青色申告承認申請書を提出期限内に税務署へ提出することが必要です。また、青色申告を適用する条件として、青色申告適用年の確定申告では、正確な帳簿の記帳を行い、領収書等の証拠書類を一定期間保存する必要があります。白色申告でも証拠書類の保存などは必要なため、積極的に青色申告を選択することをおすすめします。 まとめ 賃貸用不動産の投資は証券会社での投資とは違い、購入後の行動で不動産収入も経費も変わってきます。何もしなければ、空き室は増え、経費にできる支出も経費にできません。結果として利回りが変わってきます。適正な経費を計上はすぐにでも始められることです。わからないことは税理士へ相談しましょう。   執筆者: 須栗 一浩 税理士   税理士法人エムエスオフィス 代表 1995年に税理士登録し、これまで個人法人の関与先クライアントは500件をこえる。個人事業の開業から、法人設立、相続税まで含めたトータルのコンサルタント業務をおこなう。企業のICT化も推進し、クライアント企業への導入も進めている。ファルクラム租税法研究会研究員
無料査定・売却のご相談

無料査定・売却のご相談

土地・戸建て・マンションなど不動産の売却ご相談はこちらへ

店舗から探す

Store search

大和ハウスリアルエステート株式会社 Copyright DAIWAHOUSE REAL ESTATE INC. All rights reserved.