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転勤が決まったとき持ち家はどうする?
年度末に向けて人の移動が多くなりますが、もし転勤となった際、自宅が持ち家の場合はその家を
どうするか決めなければなりません。
とはいえ、何から手を付ければいいのか
わからないという人も多いでしょう。
今回は転勤が決まった場合は持ち家を
どうすればいいのか、具体的にどんなことから
始めればいいのか解説していきます。
転勤が決まった場合の持ち家の扱い方3つ
転勤が決まったら、まず単身赴任するのか、家族と一緒に移住するかを話し合って決めることが必要です。配偶者の仕事や子どもの学校などの都合を考慮しつつ、今後の生活について決めましょう。
持ち家があり、単身赴任なら家族がそのまま持ち家に住むことになりますが、家族と一緒に引っ越す場合は持ち家をどうするか、決める必要が出てきます。
この場合、大きく分けて3つの方法があります。1つ目はそのまま何もせず、いつか転勤から戻るときのために建物の管理だけして持ち家を所有し続ける方法、2つ目は持ち家を賃貸住宅として貸し出す方法、3つ目は持ち家を売却する方法です。それぞれ詳しくみていきましょう。
1.<そのまま所有し続ける>
持ち家をそのまま空き家として所有し続ける場合、新たな住宅の住居費とは別に空き家の建物維持費を負担することになります。たとえ住んでいなくても、固定資産税や都市計画税といった税金の他、マンションなら管理費や修繕積立金、一戸建てなら建物や庭などの維持費が必要になります。また、住宅の建物や設備は人が使用しないと劣化が早まるので、定期的に室内の換気をしたり、キッチンやトイレなどの水を時々流したりといった管理も必要です。
転勤の期間が決まっており、持ち家に数年で戻ってくることがわかっている場合やその可能性が高い場合は、維持費の出費もその期間に限られるので、そのまま空き家として持ち続けるという選択でもいいかもしれません。一方、いつ転勤から戻ってくるかわからない、あるいは転勤先から戻る可能性が低い場合は、空き家となった持ち家の維持費や手間が長期間かかることも考えられるため、そのまま所有し続けるのはあまりおすすめできないといえます。
2.<賃貸住宅として貸す>
持ち家を賃貸住宅として貸し出す人は少なくありません。分譲タイプのファミリーマンションや一戸建ての賃貸住宅の中には、持ち家を賃貸住宅として貸し出している例がよくあります。不動産情報サイトで賃貸住宅を検索すると、相当数の募集が出ていることがわかるでしょう。
持ち家を賃貸住宅として貸し出す場合、以下のようなメリットがあります。
- ① 家賃収入が入る
- 定期的に家賃収入が入るので、ローンの返済や必要経費を差し引いて残った分は転勤先の住居費などに充てることもできます。
- ② 人が住むことで、建物の劣化が抑制される
- 人が住むことで空き家にしておくよりも建物の劣化は抑制されます。ただし、入居者によっては建物を汚損されることもあるので、そうなった場合に取り決めについて管理会社に確認しておく必要があります。
- ③ 資産として手元に残る
- 売却ではなく賃貸住宅にすることで、持ち家が資産として残ります。
- ④ 賃貸借契約しだいでは、転勤明けに持ち家に戻ってくることができる
- 定期借家(建物賃貸借)契約であれば、期間を限定して貸し出すことができるので、転勤から戻ってきたときにふたたび持ち家に住むことができます。
ただし、以下のような注意点もあるため、事前に把握しておく必要があります。
- ① 手間と費用がかかる
- 賃貸募集の経費や賃貸管理費、修繕費などの費用のほか、不動産会社とのやりとりなど貸主としての手間がかかります。
- ② 確定申告が必要となる
- 不動産収入がある場合は確定申告が必要となるので、その手間がかかるほか、税理士などへの費用が発生することもあります。
- ③ 賃貸需要がある地域でないと賃貸住宅として貸せない
- 賃貸住宅として貸し出すには、第一に借り手が見つかるかどうかが重要です。持ち家のある地域に一定の賃貸需要があるか、事前に調査したり、不動産会社に相談したりする必要があります。
- ④ 賃料と住宅ローンの返済額等とのバランスがとれなくなることも
- 賃貸住宅の賃料が、住宅ローンや固定資産税などの税金といった不動産の維持費の合計を下回る場合、自分で不足分の資金を持ち出さなければなりません。
- ⑤ 住宅ローンを借りている金融機関の承諾が必要
- 住宅ローンは、自己居住用の住宅を購入するための資金として借りているため、賃貸住宅として貸し出すのは本来、ローンの契約(金銭消費貸借契約)に違反します。契約に違反すると、最悪の場合は一括返済しなければならなくなるので、賃貸住宅にしたいときはまずローンを借りている金融機関に相談し、賃貸住宅として貸し出すことに了承を得る必要があります。
- ⑥ 賃貸借契約しだいでは、転勤明けに持ち家に戻ってくることができない
- 普通借家(普通建物賃貸借)契約の場合、基本的に特別な理由がなければ貸主の都合で契約解除できないため、転勤から戻ってきても入居者が退去するまで持ち家に住むことができません。
3.<売却する>
住まなくなった持ち家をそのまま維持したり、賃貸住宅として貸し出したりする場合、いずれも維持費や管理の手間がかかります。それがもったいない、面倒だと思うなら、売却するのがベストな選択です。
売却する場合、売却の費用や手間はかかりますが、売却してしまえば維持費は不要になり、継続的な手間もかからなくなります。
持ち家を売却すると、以下のようなメリットがあります。
- ① 税金や住宅ローン、維持費などの費用や手間がなくなる
- 売却後は税金や維持管理費などの費用が不要となり、さらに売却した資金で住宅ローンを完済できれば、住宅ローンの返済がなくなります。
- ② 売却益が出る場合もある
- 売却金額によっては売却益が出る場合もあり、転勤先の生活費などに充てることができます。
- ③ 転勤先で住宅を購入する場合、持ち家の住宅ローンがなければ購入しやすい
- 住宅ローンは本来の趣旨から2つ組むことが難しいため、売却によって持ち家の住宅ローンを完済できれば、新たな住宅の購入に際して住宅ローンを組みやすくなります。
一方で、以下のような注意点もあります。
- ① 売却する手間や費用がかかる
- 不動産会社に仲介を依頼する、売主として書類などを準備するといった手間や、仲介手数料や登記費用、税金などの費用がかかります。
- ② 売却金額と住宅ローンの残額によっては資金の持ち出しがある
- 売却した金額が住宅ローンの残債を下回る場合、ローンを完済するために自己資金の持ち出しが発生することがあります。
- ③ 転勤から戻ったときはあらためて住宅を購入または賃貸住宅を借りる必要がある
- 当然ながら持ち家を売却すると、転勤から戻ったときには新たに住宅を購入するか、賃貸住宅を借りる必要があります。
まとめ
転勤時の持ち家のその後については、転勤となる期間や家族と移住するかどうかがポイントになりますが、基本的には持ち家を所有し続けるだけで維持費がかかります。
賃貸住宅として貸し出す場合は、住宅ローンを借りている金融機関の了承を得る必要があり、賃貸募集や修繕などのコストがかかります。
加えて、賃料と住宅ローン返済額との兼ね合いもあり、賃貸需要があることが前提になるので、慎重に検討することが必要です。
売却する場合は売却時に一時的な手間や費用がかかり、資産を手放すことになるという
側面もあります。いずれの方法も、それぞれ手間や費用がかかり、メリットと注意点があるため、事前に把握した上でどうするのか考えるようにしましょう。
執筆者:岡田忠純
不動産鑑定士・不動産証券化協会認定マスター
不動産の鑑定評価はもちろん、不動産のキャッシュフロー分析や、取引、投資、開発などのアドバイザリーとして多くの実績がある、不動産のプロフェッショナル。官公庁からの依頼にも数多く対応している。
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