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マンション
得をする売却、損をする売却の話
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マンションを売却する際はできるだけ
高く売りたいところです。
住宅ローンの残高以上であることはもちろん、
あわよくば購入金額より高く売りたいという方が
多いのではないでしょうか?
昨今ではマンションを高く売る方法を
解説した本やコラムなどがたくさんありますが、
実際のところどんな部分を重要視しながら
売却を進めていけばいいのかよくわからないという
場合もあるでしょう。
今回はマンション売却を進めていく前に
知っておいていただきたい事実や
お得に売却するためのポイントを紹介します。
1.マンションは資産ではなく消耗品
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マンション売却を考えているときに知っておきたい事実とは「居住用であるマンションは、人が暮らすことが目的の消耗品であり、資産ではない」ということです。これは自宅として暮らしているマンションの話で、家賃収入が目的の収益用マンションとは別になります。
資産とは、お金はもちろん、株や債券(国債・社債)、不動産のことを指し、お金を生み出すもの全般が含まれます。お金の生み出し方は2つあり、1つは持っているだけで収入を得られる方法、もう1つはそれを売ることで利益を得られる方法がありますが、いずれもお金を生み出さなくなった場合は資産とは言えません。
例えば、株は持っているだけで配当収入があります。そして、会社の業績が好調であれば株価が上がり、その株を売れば売却益が出ます。お金を持っているだけでは収入は増えませんが、銀行に預けるとわずかながら利子がつき、為替の場合は売却益もあります。また、お金はたいていのものとすぐに目減りなく交換できますから、新たに生み出すお金がなくても資産にはなるでしょう。
これを踏まえると、マンションは高いお金を払って手に入れる財産ではありますが、お金を生み出す資産とは言いきれないことがわかります。
2.マンションが消耗品である理由とは
マンションが消耗品である理由には、建物の減価償却がかかわっています。減価償却は税務や会計でよく聞く言葉ですが、ここでは年数とともに建物の機能や耐久性が劣化する物理的な意味も含んで説明します。
マンションは土地と建物で構成されており、基本的に土地には減価償却がないものの、建物には耐用年数があります。マンションの耐用年数は、税務上・理論上・実態上の数値がありますが、一般的な認識は50年前後です。ただし、建てたままの状態で50年間利用できるということではありません。適切にメンテナンスされていることが前提です。マンション内の給湯器や給排水管などはさらに耐用年数が短く、10~15年で傷んだり壊れたりするため、定期的に新しい設備に更新する必要があります。もちろん、修繕や更新はタダではできませんので、その都度費用がかかります。
このかかった費用分は、利用によって消耗されたと考えられます。ただ、利用しなければ消耗しないわけではなく、建物は日夜、太陽光や雨風にさらされ、地震や洪水、高潮などの災害の影響を受けます。また、テクノロジーの技術革新によって設備はどんどん進化し、生活スタイルが変化するだけでなく、法律の改正も大きく影響します。1981年に改正された建築基準法では、いわゆる新耐震設計法が導入され、新耐震基準の前に建ったマンションは経済的に大きく減価しました。
このように、基本的にマンションは築年数が増えるほどさまざまな意味で劣化し、お金を生み出すどころか価値的にも減価していく消耗品なのです。
3.マンションの価格は立地と築年数で決まる
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当たり前のことですが、マンションの価格は立地条件によって大きく変わります。駅から近い、スーパーやコンビニが近い、会社から近いといった立地条件に優れたマンションは相対的に高くなります。基本的には、マンションを買った後に立地条件を大きく変えることはできません。
また、同じ立地条件でも、築年数が新しいマンションほど人気があります。この築年数も、後から変えることはできません。つまり、立地条件と築年数でマンション同士の優劣や序列が決まってしまうことから、新しい駅ができるなど周辺の環境に大きな変化がない限り、買った時点で大体の売却価格が決まっているのです。
4.マンション売却で得をするには売り時が大事
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ではマンションを売却すると必ず損をするかというと、そうでもありません。世の中の景気や不動産相場に影響されるためです。世の中の景気がいいと、マンションの価格は上がりますし、不動産がいわゆるバブルの時期は当然マンションの価格も上がります。景気が良くないときに買って、景気が良いときに売却すれば売却益があり、逆に景気が良いときに買って、景気が悪いときに売却すれば、売却損があるというわけです。
そうすると、適切な売り時を見極めることが重要になってきますが、そう簡単に景気の良し悪しや、不動産相場が上がっているかどうかはわかりません。さまざまな情報を分析して、状況を予測していくことが必要になります。
マンションの価格は需要と供給の関係で決まりますので、需要に関する情報としてマンションが所在するエリアの人口と社会増減数の変化を、供給に関する情報としてマンションの新規登録件数や在庫件数などの動向を確認します。人口と自然増減数は所在する市区町のホームページでも確認でき、生産年齢層の流入が増えていれば、需要が増えている可能性があります。
中古マンション市場動向については、「(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)、(公社)中部圏不動産流通機構(中部レインズ)、(公社)近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ)、(公社)西日本不動産流通機構(西日本レインズ)」の公式サイトに掲載されています。中古マンションの新規登録件数や在庫件数が減少していると、供給が減っていることになりますので、需要が一定であれば価格が上がる可能性があるといえるでしょう。
5.地価や建築費、社会情勢も考慮
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マンション売却では、地価や建築費の動向も重要になってきます。地価や建築費が上昇すれば、新築マンションのコストも上昇しますので、割安な中古マンションの需要が増えるケースがあります。最近では新築マンションの販売価格が上昇しないように床面積を小さくし、割安な部材を使うことでコストを抑える工夫がされているようですが、こうした状況を受けて同じ間取りでも床面積が広く、より高級な部材が使用されている中古マンションの方を選択するケースもみられます。
さらに、社会情勢も影響します。例えば、環境問題が注目されていることが理由の1つとなりオール電化仕様のマンションの人気が高まるとします。しかし電力不足が問題になると、反対にオール電化のマンションは敬遠される傾向があります。
何がどう影響するのかを考えると収拾がつかなくなりますが、少なくとも各地域のレインズの公式サイトで中古マンションの市場動向をしっかり押さえておきましょう。
まとめ
マンションは基本的には快適に暮らすことが目的ですから、損得で考えること自体が難しいと言えます。ただ、さまざまな要因でマンションの市場価格は変動しているため、時として売却益が得られることがあり、資産性が生じてきます。この資産性ばかりに目が行くと、高く売って儲けたいという気持ちになりがちですが、まずはこれまで雨風をしのげる快適な居住空間で暮らせたことに感謝し、高く売れればラッキーだと考え、安く売れたとしても、快適な生活費の一部だったのだと捉えれば、損をしたと感じることはなくなるかもしれません。
執筆者:岡田忠純
不動産鑑定士・不動産証券化協会認定マスター
不動産の鑑定評価はもちろん、不動産のキャッシュフロー分析や、取引、投資、開発などのアドバイザリーとして多くの実績がある、不動産のプロフェッショナル。官公庁からの依頼にも数多く対応している。
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