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一戸建てを売るときの注意点とは?
自宅などの一戸建てを売却する場合、
土地や建物の権利が異なるため、
さまざまな確認が必要となります。
マンションの売却時よりも手間や費用が
発生することが多いので、
売却前に何が必要なのか把握し、
しっかり準備しておかなければなりません。
今回は一戸建ての売却を検討する際に
知っておきたい注意点などを紹介します。
ほとんどのマンションは、区分所有法による「区分所有」となるため、敷地や建物の共用部分は区分所有者で共有し、専有部分の権利=土地と建物の権利と一体とされています。従って、売却の準備として権利の確認をする場合、基本的に自分の所有する専有部分について確認すればよく、比較的簡単です。
一方、一戸建ての場合は土地の権利と建物の権利は別ものです。しかも、土地の権利では、隣地や土地に接する道路に関する権利など、土地に関係する権利の確認が必要になります。また、一戸建てでも賃貸併用住宅など一部賃貸で貸している場合や見た目は1棟でも建物の権利を分割している場合などがあり、建物の権利関係についてマンションよりも自由に権利設定できる分、確認すべき事項が多くなります。
権利関係で確認すべきものは以下のようなものがあります。
土地の権利
- 権利の種類:所有権(共有の有無含む)・借地権(地上権、賃借権)・私道の権利・地役権・抵当権等
- 権利の状態:共有の有無、借地・地役権期間、抵当権設定金額等
- 権利者:権利者との関係
建物の権利
- 権利の種類:所有権(共有の有無含む)・賃借権(借家権)・配偶者居住権・抵当権等
- 権利の状態:共有の有無、借家期間、抵当権設定金額等
- 権利者:権利者との関係
土地・建物の状態をしっかり確認
権利以外に、土地や建物の状態をきちんと把握しておくことも重要です。
マンションは、土地(敷地)や建物共用部分については管理組合や管理会社が状態をある程度把握しており、修繕の履歴や修繕が必要な箇所(修繕予定)についても問い合わせることで確認することができます。そのため、マンションの売主が売却時の状況確認をする場合、自分が所有する専有部分の状態について把握していれば問題ありません。
一戸建てを売却する場合はマンションと違い、土地、建物についてすべての状態を売主となる所有者が把握していなければなりません。
土地の状態のチェックポイント
一戸建てを売却する際の土地の状態のチェックポイントは以下の通りです。
- 隣地との敷地境界
- 一般的に売却時には、敷地を測量し、隣地や接する道路の土地の所有者に境界を確認してもらい、同意を得て境界確認書等に署名、捺印をしてもらう必要があります。この一連の流れで敷地(面積)を確定することを「境界確定(確定測量)」といい、測量や確認書の取得に土地家屋調査士や測量士への費用が発生します。
- 近隣との申し合せ
- 売却前に隣接する敷地への越境物や、逆に隣接する敷地からの越境物の扱いや共同で設置したフェンスや塀の扱い、「電線や上下水道管が相手の敷地を経由している」など敷地に関連して隣地と交わした覚書や確認書といった申し合わせ事項について把握しておく必要があります。
- 特に、先代の所有者間で取り交わされたものなどは見落としがちになります。過去に取り交わした内容が不明な場合や新たに申し合わせが必要な場合は売却活動前に不動産会社に相談して調査してもらうこともできます。
- 私道負担
- 自分が所有する敷地の一部を道路として提供している場合や、接する道路が他人の所有する敷地の一部である私道の場合、利用する私道に関して費用が発生しているかの確認も必要です。
- 上下水道管の状況
- 敷地に埋設されている上下水道管等の配管に関しても、隣地を経由している場合は隣地所有者の承諾が必要になるケースや、管自体が共有の私設管で配管の利用や交換には共有者の承諾が必要といったケースもあります。詳細がわからない場合は売却相談時に不動産会社にその旨を告げて、調査してもらった方がいいでしょう。
建物の状態のチェックポイント
一戸建てを売却する際の建物の状態のチェックポイントは以下の通りです。
- 基礎や屋根など主要構造物の状況
- 売却前に建物の基礎のひび割れや屋根からの雨漏り、建物の傾きといった建物の状況を把握しておく必要があります。気になる場合は、事前に建築士など専門家に建物の状況について調査・検査(インスペクション)をしてもらうことで、売買後のトラブルが起きにくくなります。
- CATV・セキュリティ設備などの契約状況
- プロパンガスやCATV(ケーブルテレビ)、警備会社とのセキュリティなどを利用している場合は契約内容や契約期間などの状況を確認しておきます。固定電話やインターネットなどは簡単に契約・解約できますが、設備が建物に設置されているものについては、売却後に新所有者へ引き継ぎできるかについても確認しておきましょう。
- リフォームの履歴など
- リフォームの履歴は、リフォームを実施した所有者しか状況を把握できないものなので、リフォームの箇所、時期、内容についてまとめておくとよいでしょう。
契約不適合責任への対応
不動産の売買でも「契約不適合責任」が売主に課されます。契約不適合責任とは、売買契約で売買の目的物に品質不良や品物違い、数量不足などの不備があった場合に、売主が買主に対して負う責任を指します。
契約不適合責任の内容は大きく分けて以下の4つです。
- 修補(修理)や代替品納入の責任
- 買主側に損害が発生した場合の損害賠償責任
- 売主側が修補等に応じない場合に買主側から代金減額請求があれば応じる責任
- 売主側が修補等に応じない場合は契約解除となるというものです。
一戸建ての売買では、マンションに比べて土地や建物について売主が買主に対して負う契約不適合責任の対象範囲が広くなります。実際の売買取引では、売主が売買契約時に確認した不具合についてすべてを買主に告知する必要があります。契約時に告知した内容について、買主と協議して承諾を得た不具合は引き渡し後の契約不適合責任の対象から外れます(隠れた欠陥や不具合は除く)。
また、中古一戸建ての場合、契約不適合責任を免責とする契約もできますが、免責であっても引き渡し後に問題となることがあるので、少なくとも売買契約前に不具合の状態を把握しておく方がよいでしょう。
出典:国土交通省|住宅業界に関連する 民法改正の主要ポイント
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/dl_files/kaisei_minpou.pdf
まとめ
一戸建てを売却する場合、土地や建物など目に見えるものだけでなく、権利関係が売却価格に影響することもあります。権利関係が複雑であったり、売買が困難となる権利が設定されていたりする場合もあり、専門的な知識がないとわからないことも多いです。売却時には権利関係や土地・建物の状況について不動産会社に詳しく伝え、しっかり調べてもらうようにしましょう。
執筆者:秋津 智幸
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。
横浜国立大学卒業後、神奈川県住宅供給公社に勤務。その後不動産仲介会社等を経て、独立。
現在は、自宅の購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う。その他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。
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